家計を支える家族が突然亡くなったり働けなくなったりする不安は、子育て世帯に限らず多くの家庭が抱いています。もし収入がなくなっても、生活を続けられる保険があったら安心できます。
収入保障保険とは、被保険者が事故や病気で亡くなったり、高度障害になった場合に、一定期間にわたり収入を補償する生命保険の一種です。この記事では、万が一の際に安定した生活を支える収入保障保険の仕組みや選び方、メリット・デメリットについて解説します。ぜひ最後までご覧ください。
働き盛りで小さなお子さんがいる方は、記事を読んで必要性を確認してみてください。
収入保障保険とは保険金を年金形式でもらえる死亡保険
収入保障保険は、被保険者が死亡したり高度障害になったりした場合に、遺族が年金形式で毎月保険金を受け取れる生命保険です。一般的な定期保険と比べて保険料が安く、保険金は一定期間にわたって毎年支払われるため、遺族の生活費を安定的に補償します。
子育て世代の家庭に、長期的な経済的支援としても役立つ収入保障保険について、以下の内容を解説します。
- 収入保障保険の目的
- 収入保障保険の仕組み
収入保障保険の目的
収入保障保険の目的は、被保険者が亡くなったり高度障害になったりしても、家族の生活を経済的に支えることです。収入を失った場合でも、遺族は生活費を確保し、安定した生活を続けることが可能です。教育費や住宅ローンの支払いにも対応でき、公的保障が不十分でも、家族の経済的支えとして重要な役割を果たします。
子育て世代にとっては、将来の教育費や生活費の負担を軽減し、安心して生活を送るための手段として有効です。家計を支える大黒柱が不測の事態に陥っても、家族の生活水準を維持し、生活の質を保つための強力な経済的基盤となります。
遺族年金だけでは不足する、生活費や教育費のカバーに向いています。
収入保障保険の仕組み
収入保障保険は、保険金が年金形式で定期的に支払われ、毎年徐々に減少する「逓減型」が一般的です。逓減型(ていげんがた)とは、保険金額が一定の金額または一定の減少率で減っていく契約のことです。保障期間は「10年間」「70歳まで」のように設定できます。安価な保険料で必要な保障を得られる仕組みです。
保険金の支払事由がなければ保険金は支払われませんが、家族の生活費や教育費を長期的に支えるために役立ちます。家計の主要な担い手が死亡や高度障害により収入を失った場合でも、遺族が安心して生活を続けるための経済的基盤を提供します。生活の変動に対応できる柔軟性を持ち、将来の不安を軽減することが可能です。
»自分に必要な生命保険とは?種類や選び方について詳しく解説
収入保障保険のメリット
収入保障保険には、家族の生活を守るための大きなメリットがあります。次のとおりです。
- 手頃な保険料で保障が得られる
- 保険金を計画的に使える
- 死亡や高度障害のリスクに備えられる
手頃な保険料で保障が得られる
収入保障保険は、通常の生命保険より保険料が抑えられており、若い世代や子育て世帯にも加入しやすい点が特徴です。保険金を年金形式で受け取るため、保険料が安く、必要な保障額を状況に応じて柔軟に設定できます。子どもの教育費や生活費を重点的に保障し、家計の負担を軽減しながら必要な保障を確保できる点が魅力です。
タバコを吸わない人や、健康診断の結果が優良な人がより安く加入できる保険会社もあります。
保険金を計画的に使える
収入保障保険は、毎月定額で保険金を受け取ることで、一括受取よりも計画的な資金運用が可能です。急な出費や浪費を抑え、家族が長期的に安定した生活を送るための財源を確保できます。家計管理が苦手な場合でも、保険金が定期的に支払われるため収入が安定し、将来的な生活の変動に柔軟な対応ができます。
死亡や高度障害のリスクに備えられる
収入保障保険は、死亡や高度障害によって収入が絶えても、家族が生活費や教育費を確保できる保険です。住宅ローンの返済負担を軽減し、家族の経済的な安定を長期間にわたり支えてくれます。国からの遺族年金だけでは資金が不足する場合でも、収入保障保険があれば子どもの将来に不安を感じることはありません。安心して生活が続けられます。
収入保障保険のデメリット
収入保障保険の主なデメリットは、次の3つです。
- 解約返戻金がなく貯蓄性がない
- 保険期間終了間近だと受け取れる保険金が少ない
- 課税の対象となる
解約返戻金がなく貯蓄性がない
収入保障保険は解約返戻金がなく、保険料がすべて保障に充てられるため、資産形成には向いていません。満期での受取金や死亡・高度障害時以外の保険料返還もないため、貯蓄を目的とする場合は、別途貯蓄や投資を行う必要があります。万が一の際の保障を求め、家族の経済的な保障を最優先する設計です。
保険期間終了間近だと受け取れる保険金が少ない
収入保障保険は保険期間が終了に近づくと、受取金が少なくなります。保険金が年金形式で分割して支払われるので、支払い回数が減ることで、受け取る総額も減るためです。保険期間終了間際の保障は、他の保険商品と比べて効率が悪く、短期間の利用には向いていません。長期的な保障を確保したい方におすすめです。
課税の対象となる
収入保障保険の保険金は課税の対象です。一時金で受け取る場合は、遺産として相続税が課されます。年金形式で受け取る場合は所得税の対象です。一般的に相続税よりも所得税のほうが課税方式や税率が高いですが、どちらがいいかは受取るときの状況によります。どのように受け取るかは、専門家に相談するのがおすすめです。
収入保障保険と他の保険の比較
収入保障保険は、似たような保険がいくつかあります。次の順番で比較していきます。
- 就業不能保険との比較
- 所得補償保険との比較
- 定期保険との比較
名前で勘違いされますが、収入保障保険は死亡保険です。
就業不能保険との比較
収入保障保険と就業不能保険の違いを表にまとめました。
項目 | 収入保障保険 | 就業不能保険 |
保障内容 | 死亡、高度障害 | 病気やケガによる就業不能 |
目的 | 遺族の生活費や教育費を中長期的に保障 | 本人の収入を中長期的に保障 |
保険金の受取方法 | 通常、月々で受取る | 月々で受取る |
保障期間 | 長期(10年、20年、60歳、65歳など) | 現役中(60歳、65歳、70歳など) |
保険料 | 比較的安価 | 保障範囲によって高額になることも |
適用対象 | 幅広い層に適用可能 | 主に給与所得者向け |
加入条件 | 比較的緩やか | 職業によって制限がある場合あり |
収入保障保険は、被保険者が死亡または高度障害となった際に遺族を経済的に支える保険で、長期的な生活費の保障が目的です。就業不能保険は、病気やケガで働けなくなった場合に本人の収入を保障します。収入保障保険は、家族全体の経済的安定を目的とし、就業不能保険は本人の生活費補填を重視する点で異なります。
所得補償保険との比較
収入保障保険と所得補償保険の違いを表にまとめました。
項目 | 収入保障保険 | 所得補償保険 |
保障内容 | 被保険者の死亡、高度障害 | 病気やケガによる就業不能 |
目的 | 遺族の生活費や教育費を長期的に保障 | 本人の所得を短期的に補償 |
保険金の受取方法 | 通常、月々で受取る | 通常、月々で受け取る |
保障期間 | 長期(10年、20年、60歳、65歳など) | 1年更新 |
保険料 | 比較的安価 | 比較的安価 |
適用対象 | 遺族のための保障 | 本人の収入補償 |
支払い条件 | 死亡または高度障害時 | 病気やケガで働けなくなった場合 |
収入保障保険は、被保険者が亡くなった場合や高度障害となった場合に、遺族を長期的に支える保険です。所得補償保険は、病気やケガで働けなくなった際に、本人の所得を補償します。収入保障保険は遺族のための設計で、所得補償保険は本人の短期的な収入減少をカバーします。自分や家族の状況に応じて選択しましょう。
ちなみに就業不能保険と所得補償保険の一番の違いは、保障期間です。就業不能は中長期、所得補償は短期補償です。
一般的な定期保険との比較
収入保障保険と一般的な定期保険の違いを表にまとめました。
項目 | 収入保障保険 | 定期保険 |
保障対象 | 被保険者の死亡、高度障害 | 被保険者の死亡、高度障害 |
目的 | 遺族の生活費や教育費を長期的に保障する | 遺族に対するまとまった金額を保障する |
保険金の受取方法 | 年金形式で定期的に受け取る | 一時金としてまとめて受け取る |
保障期間 | 長期(10年、20年、60歳、65歳など) | 短期〜長期まで設定可能 |
保険料 | 比較的安価である | 収入保障保険より高額な場合が多い |
保険金額 | 死亡時の年齢が高齢であるほど、少なくなる | 保険期間中は一定額で変わらない |
保険金の管理 | 月々のため収入のように使える | 一括のため計画性が必要 |
収入保障保険は、保険金を年金形式で定期的に受け取り、遺族の生活費を長期間にわたりサポートします。一般的な定期保険は、一時金で受け取るため大きな支出に対応しやすい反面、長期的な生活費の管理が難しいです。収入保障保険は長期的な生活安定が目的で、定期保険は一括での資金が必要な場合に向いています。
毎月の生活費は収入保障保険、進学時のまとまった教育費は定期保険が向いています。
収入保障保険が必要な人
収入保障保険は、突然の死亡リスクに備え、家族の生活を守る重要な手段です。収入保障保険が必要と考えられるのは、次のような人です。
- 家計を支えている人
- 小さな子どもを持つ子育て世帯
- 個人事業主やフリーランスの人
家計を支えている人
家計を支える人にとって、収入保障保険は不可欠です。家族の生活費を負担し、住宅ローンや教育費などの大きな支出を抱える場合、万が一の際に家計の安定を保つための支えとなります。収入が突然途絶え、家計が大きく揺らぐリスクを避けるためにも必要です。
扶養家族がいる人や、世帯の主な収入源となる人にとって、収入保障保険は家族の生活水準を維持する強力なツールとなります。死亡や高度障害といった予測できないリスクに備えることで、家族が安心して生活を続けられる基盤が守られます。
小さな子どもを持つ子育て世帯
小さな子どもを育てる家庭では、養育費や教育費などの経済的負担が大きく、長期的なサポートが必要です。収入保障保険は、主たる生計維持者が亡くなった場合、家計に与えるリスクを軽減する役割を果たします。生活費が高騰しがちな子育て中でも、保険料の負担を抑えつつ、必要な保障を得られる点も魅力です。
ご夫婦とも働いている場合、どちらも収入保障保険に加入している世帯が多いです。
家計の状況や子どもの成長に応じて柔軟に対応できるため、小さな子どもがいる家庭には最適です。子どもが成長するにつれ必要なお金が減る観点から、収入保障保険なら必要な期間に必要な保障を受けられます。
»子どもの生命保険とは?目的や種類について解説
個人事業主やフリーランスの人
個人事業主やフリーランスにとって、収入保障保険は経済的安定を維持するための重要な保険です。個人事業主やフリーランスは、社会保障制度が会社員に比べ手薄なため、備えがなければ家族の生活が困難になりがちです。収入保障保険に加入すれば、万が一の場合でも長期的に安定した収入をカバーすることができます。
夫婦で事業を営んでいる場合は、事業継続のための費用や借入金の返済としても活用することもできます。
収入保障保険に関するよくある質問
収入保障保険に関するよくある質問をまとめました。家族構成や経済状況に応じて適切な選択をするために、ぜひ参考にしてください。
- 収入保障保険のやめどきは?
- 収入保障はいくら必要?
- 収入保障保険は何歳まで入れる?
収入保障保険のやめどきは?
収入保障保険をやめる時期は生活状況や経済状況に応じて異なりますが、一般的には次のような理由があるときです。
- 子どもの独立
- 住宅ローンの完済
- 十分な貯蓄の確保
子どもが独立し教育費の負担がなくなると、家計にかかる経済的負担が減少します。住宅ローンの返済が終了すれば、毎月の固定費が減ります。貯蓄が十分あれば、万が一の事態に備えるための資金が自己資金で確保できるため、保険の必要性はそれほどありません。必要に応じて、専門家に相談しながらやめどきを検討しましょう。
団体信用生命保険にしていれば、死亡時は住宅ローンの支払いが免除されます。その点も考慮してやめ時を検討しましょう。
収入保障はいくら必要?
収入保障保険の必要額は、ライフスタイルによって異なります。生活費や将来の教育費、家族構成、生活スタイル、借入金の返済額などを考慮して、家族が安心して生活できる金額を考えましょう。算出が難しい場合は、専門家への相談もおすすめです。家族構成や収入の変化に応じて、定期的に必要額を見直しましょう。
» 生命保険はいくら必要?保険金の目安と調整のポイント
ファイナンシャルプランナーにライフプランニングをしてもらい、将来必要なお金を見える化することも有効な手段です。
収入保障保険は何歳まで入れる?
収入保障保険に加入できる年齢は、一般的に15〜60歳くらいまでです。保険会社によっては、65歳まで加入可能な場合もあります。中には70歳まで加入できる商品もありますが、年齢が上がると保険料も上がるので、若いうちに加入する方が有利です。健康状態によって加入が難しいこともあるので、早期の検討が重要です。
»生命保険は何歳から加入すべき?ベストなタイミングについて解説
まとめ
収入保障保険は、万が一の際に遺族の生活費を長期的に確保します。家計を支える方や子育て世帯にとって、心強い生命保険です。手頃な保険料で保障を得られますが、貯蓄性がありません。保険期間終了間近では、保険金が減少する点にも注意しましょう。状況に合った最適な保障を確保するため、専門家への相談も検討しつつ最適な保険プランを検討しましょう。
» 家族の生活を守る終身保険のデメリットとは?
» 生命保険とは?仕組みや種類を解説